伝統の技術を「今」に活かす。

つまみかんざし作家 藤井 彩野さん

美を紡ぐ人Vol 10

Profile

藤井彩野 つまみかんざし作家
ふじいあやの
1981年東京都生まれ。千葉県松戸市育ち。職人チーム「つまみかんざし彩野」代表。
2005年、“つまみ細工を日常に”をコンセプトに、「つまみかんざし彩野」の屋号で事業を開始。
2018年、千葉県指定伝統的工芸品製作者に認定された。
同年、「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018匠」選出。

日本人の美意識やモノを大切にする心が息づく。

つまみかんざしの起源は、江戸時代初期に京都で花びらをモチーフにした簪(かんざし)が作られ、それが江戸に伝わり、より簡素な「つまみかんざし」が誕生したといわれています。江戸時代中期以降には、武家や町人の間でも着物の端切れなどを使って作ることが流行し、参勤交代のお土産としても重宝されたと伝えられています。そこには、美しい花を髪にまとう、日本人ならではの美意識と、余った布も無駄にしない、日本人のモノを大切にする心が今もしっかり息づいています。「日本らしい縁起物も多いんです。たとえば桜には五穀豊穣や繁栄の意味がある。身につけることで、お守りにもなるんですよ」と藤井さん。

[写真:(左から藤井さんの作品)七五三用の髪飾りセット。小はUピン/七五三の洋髪用/柔らかい「ふわふわ」は三歳用。大切に保管しておけば、成長して成人式や結婚式にも使える一生モノに。/ブローチとイヤリング]

海外に出て、“日本のことを知らなすぎる自分”に愕然。

今でこそ、こんなふうにきものを着て、伝統工芸のワークショップもさせていただいてますが、学生の頃は日本の手仕事や工芸にはまったく興味がなかったんです。大学1年の夏、海外に語学研修に行った際、同じ年頃の学生から、あなたの町にお寺はいくつあるの?神社は?浴衣ときものの違いは?などなど、いろんなことを聞かれるのに、ちゃんと答えられない。“日本のことを知らなさすぎる!”と海外に出て初めて気づいたんですね。

[写真:その始まりは「つまみかんざし」づくりの体験教室に参加したこと。あとは独学、無手勝流というから驚き。持ち前のバイタリティとアイデアで、時代のニーズにフィットした商品を創り出し、今では友人たちの力も借りて“チーム彩野”の道を拓く。]

帰国後、美容院でたまたま出合った「つまみかんざし」。

帰国してからは、歌舞伎とか、手当たり次第に和っぽいものに触れてみました。そんなある日、美容院でたまたま「つまみかんざし」と出合うんです。ちょうど七五三の時季で、晴れ着と合わせて髪に飾るものでした。傍らに作者の方のパンフレットが置いてあって、当時としては珍しくホームページのアドレスが添えられていた。アクセスしてみると、つまみかんざし職人の三代目の方でした。
体験教室をやっていたので、早速参加させていただいたところ、小さな正方形の布をピンセットを使って折りたたみ、いくつも花びらを作って、花に仕立てていく。これなら、大きな道具がいらないから、海外に行ったときにもデモンストレーションしやすいかなと思いました。ただ、このときはまだ“手当たり次第”の一環。趣味の領域でした。

[写真:(左から)材料となる正方形の布。縮緬と羽二重/この布を指先とピンセットでつまんで細工していく。/布は知り合いの染色会社に依頼して染めてもらうことも。花を表現する繊細な色合い。/藤井さんが使う道具。他には多彩なピンセットも。]

弟子入りも叶わず、独学でのスタート。

就職活動が始まると、就職氷河期でもあったんですけど、ことごとく失敗。そういえば、伝統系の仕事は人手が足りないと聞いたなと思い出し、どこかに弟子入りできないかと思ったのですが、それも難しいことが判明。
つまみかんざしも、職人さん不足と聞いていたので、このままいったら50年後にはなくなりそう。かといって、かんざしのままではニーズがないかも。特別な日にしか出番がないのはもったいない。ポニーテールとかシニョンみたいなヘアスタイルに挿すものなら、いいのでは。もっと日常的に使えるアクセサリーみたいな商品が作れたら。そんなふうに思うようになったんです。
ただ、思いつきはいいかもだけど、いかんせん技術がない。今みたいにワークショップがたびたびあるわけではありませんから、自分の七五三のときのかんざしを分解して研究したりしました。はい、チョー独学なんです。

[写真:つまみ細工の手順 ①ピンセットで小さな布を折る。 ②ハサミで先端を切り、花弁に。 ③糊板にでんぷん糊をのばし、できた順に並べる。 ④花弁を軸につけていく。 ⑤軸をいくつか合わせて絹糸で束ねていく。 ⑥楚々とした愛らしい桜の花が次々とできていく。 藤井さん、サクラエのためにわざわざ桜を作ってくださいました。]

和服店でバイトしながら、「つまみかんざし彩野」開業。

つまみかんざしを勉強するには、かんざしをたくさん見なきゃ。どうしたら買わないでいっぱい見られるかと考えたとき、そうだ、和服店でバイトしたら、ヒマなときに観察できるのでは。そう思って働き出すと、お客様から「きものの端布で、何かできないかしら」とご相談をいだたいて、帯留をお作りしたんです。そしたら、私も、私もと、欲しい方が現れて、本格的につまみ細工に取り組むことになりました。
大学を卒業して1年後の2005年、扱ってくださる店が見つかったのですが、ブランド名が欲しいということで、何の考えもなく「つまみかんざし彩野」という屋号をつけました。飛び込み営業も頑張ると、制作依頼も増えていきました。
売り込み先は、店主自らが選品しているようなセレクトショップがメイン。仕事は増えましたが、私はまだ和服店で働いていたこともあって手が回らず、周囲の知人、友人たちが手伝ってくれるようになり、そのうち、作り手として育ってくれました。

[写真:①季節の花などをモチーフにした多彩な作品。 ②色見本としても用いる「二重あわせ菊」。白を挟むことで華やかさが増す。帯留めやブローチにも。 ③テグスや針金、和紙などの軽い素材で作られたモチーフを吊るし、空気の微かな動きで揺らめくインテリア装飾品「モビール」。④⑤和紙でできたアロマディフューザー。伝統的なつまみ細工で創ったモダンなインテリア雑貨も人気のアイテム。木彫の熊は藤井さんの私物。]

“雑草のような伝統工芸の後継者”だと思っています。

振り返れば、最初の10年は技術をいかに高めるかに邁進した日々。まさに独学の極みですね。でも、つまみ細工を広く伝えていきたい、技術を大切に守っていきたい、その一念でした。次の10年は、和服店をやめて、職人に専心。
日常使いのアクセサリーとしてのつまみ細工の販路を広げ、仲間を増やしてチームで歩んできた年月でした。
2018年には「江戸つまみかんざし」で、千葉県指定伝統的工芸品製作者に認定されたのですが、まだまだ地元の方々に周知されていないのが現状。もっと知っていただきたいし、これからはご恩返しもしていきたい。

100年先を見据え、つまみ細工の伝統を世界へ未来へ。

現在は、チームで商品を作りながら、普及に努めています。松戸市の教育委員会からの依頼で小学生向けのワークショップを開催したり、和紙のアロマディフューザーやアート作品など、つまみ細工の新しい世界にもチャレンジを始めています。時代のニーズに合った作品を作り続けていけば、伝統工芸の技術が失われることはないと信じます。
少しずつですが、世界進出も果たしています。フェーズが変わるたびに課題も増えますが、チームのみんなと、力強く進んでいきたいと思っています。

つまみかんざし彩野 http://kanzashi-ayano.com/

[写真:(左から)2018年、千葉県指定伝統的工芸品製作者に認定。/七五三や成人式など、オーダーメイドで作品制作することも。ご本人に会い、打合せを重ねて構想を練っていく。イラストも藤井さんの直筆。/出来上がったつまみかんざし。一生の想い出になりそう。]

藤井彩野さん、スキンケアどうしてます?

藤井さんは仕事は必ず日差しが差し込む部屋でするそう。知らないうちに、日焼けしているかもしれませんね。「お肌のお手入れは特には何も」ということでしたが、きめの細かい今のお肌の状態をキープするためにも、「『サクラエ』でしっかり予防します」とのことでした。

メラニンの「生成」と「蓄積」をダブルでおさえ、しみ・そばかすを防ぐ

取材日:2025年9月12日

※製品を提供し、いただいたコメントを編集しています。