美白有効成分の定義
「美白」というと「肌を白くすること」と思う人もいるかもしれません。しかし日本の法律においては、肌を白くする効果が認められている美白化粧品はありません。
化粧品における「美白」とは、シミ・そばかすを防ぐことです。美白有効成分が配合された化粧品は、以下のアプローチによって、シミ・そばかすなどの色素沈着の少ない美しい肌を目指すことを目的としています。
美白有効成分とは、美白効果の有効性を医薬部外品として承認された成分のこと。現在、十数種類の美白有効成分が医薬部外品として承認されており、美白有効成分が配合された美白化粧品は「薬用化粧品(医薬部外品)」に分類されます。
なお、メラニンの還元作用が報告されている成分もありますが、医薬部外品として承認された美白有効成分ではありません。
日やけによりシミができるプロセス
①メラノサイトが活性化する
太陽光を浴びると、表皮の細胞が「メラニンをつくれ!」という情報伝達物質をつくります。情報伝達物質を受け取ると、メラノサイトが活性化します。
②メラニンが過剰につくられ始める
メラノサイトが活性化すると、メラニンを過剰につくり始めます。メラニンはもともと無色透明の物質ですが、チロシナーゼ酵素の働きによって褐色になります。例えるならば、メラニンは褐色の日傘。細胞の核の上に覆いかぶさるようにして遺伝子を守ります。
③メラニンの排出が滞り蓄積する
過剰につくられたメラニンは通常、肌細胞の生まれ変わりの周期であるターンオーバー(新陳代謝)によって古い細胞とともに排出されていきます。しかし、加齢や睡眠不足などによりターンオーバーが遅れると、メラニンが肌内部に蓄積・沈着してシミの原因になります。
メラニンの生成を抑える美白有効成分(情報伝達物質の働きを抑える)
ここからは、主な美白有効成分を効果とともに紹介します。まずは、先述したシミ生成のプロセス①に働きかける美白有効成分をみていきましょう。メラノサイトを活性化させる情報伝達物質の働きを抑える作用があります。
カモミラET
カモミールの花から抽出した植物エキスです。メラノサイトの細胞増殖や、メラニンの生成を活性化させる情報伝達物質「エンドセリン」の働きを抑制する効果があります。
トラネキサム酸(t-AMCHA)
特に肝斑に効果的といわれる美白有効成分です。抗炎症作用の有効成分で、近年では肌荒れに対する有効性も明らかになっています。
メラニンの生成を抑える美白有効成分(チロシナーゼ酵素の活性を阻害する)
続いて、シミ生成プロセスの②に働きかける美白有効成分を紹介します。これらはチロシナーゼ酵素の活性を阻害し、メラニンの生成を抑えます。
アルブチン
コケモモやウワウルシなどの植物に含まれる天然成分です。紫外線による色素沈着の防止効果もあるとされています。
コウジ酸
味噌や醤油、日本酒などの醸造に使われる麹の発酵液に含まれる成分です。コウジ酸には、チロシナーゼ酵素が働くために必要な銅を取り去ることで活性を防ぐ作用があります。その作用により、チロシナーゼ酵素の活性を阻害します。
エラグ酸
イチゴやリンゴなど、多くの植物に存在する成分です。チロシナーゼの働きを抑える作用があるため、過剰なメラニン色素の生成を抑えます。また、抗酸化作用があることも報告されています。
ルシノール
チロシナーゼ酵素の活性を阻害する他、メラニン生成に関わるTRP-1という酵素の活性も阻害する働きがあります。紫外線による色素沈着や肝斑にも有効とされる成分です。
プラセンタエキス
プラセンタ(胎盤)を分解・抽出して得られた液体・ペーストを加熱殺菌した成分です。豚や馬など、動物性由来のものがほとんど。メラニンの生成抑制やメラニンの排出を促す作用の他、メラニンの色を薄くする還元作用もあるとされています。
プラセンタエキスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
リノール酸
あまに油やサフラワー油などに多く含まれる不飽和脂肪酸の一種です。チロシナーゼ酵素のタンパク質の分解を促進することで、活性を抑えます。
メラニンの排出を促進する美白有効成分
シミ生成プロセスの③にアプローチする成分をみていきましょう。ターンオーバーを促すことでメラニンの蓄積を抑える成分を紹介します。
エナジーシグナルAMP
エナジーシグナルAMP*は、ターンオーバーを促すことでメラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ働きがあります。
大塚製薬が肌の生まれ変わりのメカニズムに着目し開発した成分で、2004年には美白分野で初めて「メラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ」効果が認められました。
大塚製薬の「インナーシグナル」は、エナジーシグナルAMP*配合のスキンケアシリーズです。エナジーシグナルAMP*が、新しい細胞を生み出す母細胞のエネルギー代謝を高め、年齢とともに遅くなるターンオーバーを促進。古い細胞とともにメラニンを排出し、クリアな肌へと導きます。
*アデノシン一リン酸ニナトリウム OT/メラニンの蓄積をおさえ、しみ・そばかすを防ぐ
メラニンを還元するといわれる美白成分
メラニンは酸化によって生成されるため、還元することでその色を薄くできます。ビタミンCはメラニンを還元するといわれる美白成分ですが、ビタミンCとビタミンC誘導体の効果は異なります。それぞれの違いを押さえましょう。
ビタミンC誘導体
ビタミンCには、メラニン生成の初期段階に酸化を抑制するとともに、できたメラニン色素の色を薄くする還元作用があります。しかし、ビタミンCは水に不安定で、皮膚への浸透があまり良くありません。そのため化粧品には、ビタミンCを安定化させて皮膚に浸透されやすいよう合成された誘導体が使用されています。
なお先述の通り、メラニン還元作用がある医薬部外品として承認された美白有効成分はありません。ビタミンC誘導体は、チロシナーゼ酵素の活性阻害によりメラニンの生成を抑える医薬部外品として承認された美白有効成分です。
美白化粧品の選び方
美白化粧品には、たくさんの種類があります。次の3つのポイントを参考にして選んでみてください。
医薬部外品を選ぶ
気になる美有効白成分が配合されているか否かだけではなく、「医薬部外品」または「薬用」の表示があるかどうかをチェックしましょう。
スキンケア化粧品は、法律によって「化粧品」と、医薬部外品である「薬用化粧品」に分類されます。このうち医薬部外品の薬用化粧品には、医薬部外品として効能・効果が認められた有効成分が一定濃度で配合されています。
美白効果を期待するのであれば、美白有効成分が配合された薬用化粧品(医薬部外品)を選びましょう。
まずは美白美容液を選ぶ
ひとくくりに美白化粧品といっても、化粧水や乳液、美容液、クリームなどの種類があります。まず始めに取り入れてみるなら、美白美容液がおすすめ。シミ・そばかすの予防に効果的な成分が多く配合されています。
ライン使いで効果アップ
より美白効果を引き出すために、美容液・化粧水・乳液・クリームなどを同じブランドでライン使いすることをおすすめします。ライン使いにより効率的に効果を発揮するようにつくられているものが多いので、効率良くケアできるでしょう。
美白スキンケアのポイント
どんな美白化粧品を使うかだけではなく、選んだアイテムをどう使うかも肌に大きく影響します。最後に、美白スキンケアで意識したいポイントを3つ紹介します。
美白化粧品は適量を使用する
美白化粧品の使用量や使用回数を減らしてしまうと、十分な効果が得られない可能性があります。とはいえ、使用量が多いほど効果が早く現れるものでもありません。
美白化粧品の効果を十分に引き出すためには、メーカーが推奨する適量を守って使いましょう。製品ごとに適量や適正な使用回数は異なるため、説明書をよく読んで確認してください。また、シミ・そばかすを防ぐために、継続して使い続けることも大切です。
お手入れは優しく丁寧に
洗顔や保湿を行うときは、優しく丁寧なケアを心がけましょう。こするようなお手入れは、肌の炎症を引き起こし、シミの発生を助長することがあります。
美容成分の浸透をより高める「ホットハンドケア」もおすすめです。次の手順で行ってみてくださいね。
1. 美白化粧品を優しく顔全体になじませる
2. 手のひらをこすり合わせて温める
3. 手のひら全体で顔を覆うように、ゆっくり押さえる
日やけ対策をしっかりと行う
太陽光はシミの大きな原因の1つ。日やけ止めを塗って日やけ対策することは、美白ケアの基本です。紫外線量は春から夏にかけて増え、秋冬は少ない傾向にありますが、冬でもゼロになることはありません。1年を通してしっかりと日やけ対策を行いましょう。
肌が乾燥していると、太陽光のダメージを受けやすくなります。また日やけ止めがムラづきしやすくなります。そのため、日やけ止めを塗る前は保湿ケアを行って、しっとりとしたなめらかな肌に整えておきましょう。
まとめ
美白有効成分には、シミのもとになるメラニンの生成を抑える成分と蓄積するメラニンの排出を促す成分があります。また、医薬部外品として承認されてはいませんが、メラニン還元作用をもつ成分もあります。美白に効果的な成分を含む化粧品を取り入れたスキンケアと日やけ対策で、シミをつくらせず透明感のある肌を目指しましょう。
美白におすすめの食べ物については、こちらの記事をご覧ください。
大津スキンケア研究所 所長
1992年大塚製薬入社
健粧品の基礎試験、有効性評価を担当し、2011年から大津スキンケア研究所所長。